大隅ふるさと山風景 表紙TOPへ
ふるさとの山に向ひて 言ふことなし        
ふるさとの山は ありがたきかな

         石川啄木「一握の砂」より
高隈山御岳 鹿屋市 稲尾岳 錦江町田代 国見山 肝付町
現山  肝付町 岳野山 志布志市有明町 たかくまふれあいの森 鹿屋市
陣岳国際の森 志布志市 叶(かのう)岳 肝付町内之浦 大隅の照葉樹林肝付町(二股・金弦)
悠久の森 曽於市財部

高隈山御岳 鹿屋市
高隈山は、鹿屋市と垂水市との境界付近に横たわり大隅半島中央部に位置する。最高峰の大篦柄岳や御岳などを含む標高1000メートルクラスの七つの山岳群を総称して高隈山と呼ぶ。高隈山は、最高峰の大篦柄岳(おおのがらだけ1237m)をはじめ、小篦柄岳(このがらだけ1149m)、御岳(おんたけ1182m)、妻岳(つまだけ1145m)、横岳(よこだけ1094m)、平岳(ひらだけ1102m)、白岳(しらたけ)といった海抜1000mクラスの七つの峰が連なり、かつては山伏の修験の地として賑わっていた山々である。学術的にも貴重な山で、植物の種類は4000種類以上、動物・昆虫類も多い。日本におけるブナ林の南限地にもなっており「森林生物遺伝資源保存林」に指定され、高隈山単独の森林生態系を形成している。高隈山を初め高峠大隅湖猿ヶ城渓谷一帯の景勝地は「高隈山県立自然公園」に指定されている。

御岳三角点。山頂から北方向の高隈山連山と桜島を望む

稲尾岳 錦江町田代
稲尾岳は、錦江町田代・南大隅町佐多・肝付町内之浦にまたがり、大隅半島南東部に位置する。地質は花崗岩からなり、植生はシイ、タブノキ、イス(ユス)、アカガシ等の照葉樹が中心である。植生が豊かであるだけにタヌキやキツネ、イノシシなどのたくさんの野生動物が見られ、野鳥類、昆虫類にとっても多彩な生息地となっている。かって、大隅半島の高隈山地、稲尾岳一体を含む肝属山地はわが国を代表する照葉樹林が広く分布していたが現在、固有の照葉樹林が失われつつあるという。稲尾岳・木場岳一帯の森林は、「「稲尾岳自然環境保全地域(1975年指定)」、国の「天然記念物(1967年指定)」、林野庁の「森林生態系保護地域」の指定を受け、貴重な森林の保護や再生を目指し、自然環境保全を学べる場になっている。

自然石展望台から眺めた稲尾岳

国見山 肝付町
大隅半島南端部に横たわる肝属山地は国見山地とも呼ばれ、北東から南西の方向に約50kmの長さがあり、国見山・黒尊岳・甫与志岳・八山岳・稲尾岳・木場岳等の山々が連なる。国見山(886.5m)は、黒尊岳(908.5m)・甫与志岳(966.9m)と同じ稜線にあり、肝属山地三岳の一つに数えられ、登山ルートが確立していて、三岳縦走(注)も行われる。視界の開けた東方向に目を向けると白砂青松の志布志湾、さらにはダグリ岬、沖に浮かぶビロウ島の美しい風景が飛び込んでくる。近くにはレーダー雨量観測所があり観測所地点からの展望はまさしく360度の大パノラマだ。南西方向には開聞岳がぽっかり浮かぶ。北方向には高隈山地を背景に肝属平野が広がる。背後には黒尊岳・甫与志岳と肝属山地の尾根が続く。

山腹から眺めた国見山とレーダー雨量観測所

権現山  肝付町
日南海岸国定公園の一部になっている権現山(320m)は、白砂青松の志布志湾を眺める絶景の地にある。権現山へのルートは肝属川河口の第二有明橋の波見交差点より山手に向かって進む。山頂付近には、かって樹齢1,000年もあると言われる五葉松の巨木があり、それが三十数年前の落雷で枯れてしまったという。そこで地元の有志が、五葉松の巨木跡地付近に、末代の子孫に残そうと当時の五葉松と同じ種類のヤクタネゴヨウを植えた。そのヤクタネゴヨウが今、元気に育っていた。五葉松再生の碑のある駐車場から山頂の展望所を目指して、シイやカシの茂る登山道を10分ほど進むと山頂へ辿り着く。突然目に飛び込んできたのは眼下の雄大な景色の柏原海岸と志布志湾風景だ。天気・視界も良好、志布志湾の全景が手に取るように見える。眼下の海上には巨大な国家石油備蓄のタンクと少し離れてビロウ島が浮かぶ。その奥の志布志港とダグリ岬もしっかり視界にはいる。視界を北方向にずらすと高隅連山を背景に、大隅の大地に広がる広大な肝属平野を悠々と流れる肝属川が目に入る。

権現山山頂から高隅山山系を望む。広大な平野を流れる肝付川手前の橋は第二有明橋

岳野山 志布志市有明町
志布志市有明町野井倉の市役所北側に標高274.3mの岳野山がある。山頂付近の笠祇(かさぎ)神社付近には、12体の干支の石像が鎮座し、石灯籠や開運蛙が設置されている。干支の石像は地域振興を目的に地元の有志により、1996年のネズミを皮切りに毎年一体すつ制作され、2007年のイノシシまで12年かけて完成し、力作揃いの干支の石像作品がそろっている。山腹や頂上からの眺めは絶景で360度の大パノラマを展望できる。眼下には菱田川をはさんで広大な野井倉の田園地帯が広がる。さらに遠方に目をやると志布志湾沖にビロウ島が浮かぶ。天気の良い日には霧島連山や開聞岳・桜島も眺望できる。

山頂には、1996年制作ののネズミを皮切りに2007年のイノシシまで12体の干支石像が順番に鎮座する。

たかくまふれあいの森 鹿屋市
「たかくまふれあいの森」は鹿屋市下高隅町の谷田バス停近くの林道から入り、1.4kmの地点にある。以前にも森林教室で数回訪れたことがあるが今回探訪時には、林道がポイント地点まで舗装され、駐車場が整備されていた。たかくまふれあいの森は、森林保護・教材用として大隅森林管理署が管理している「水源かん養保安林」である。低地ながら、南日本特有の照葉樹林をつくるアカガシ、シイノキ、タブノキ、イスノキなどの天然広葉樹が原生に近い形で残っており、学術的にも貴重な場所である。森の中のスダジイ(イタジイ)の巨木は、推定樹齢250年、樹高22m、幹周り609cmもあり、林野庁の「森の巨人たち100選」に選ばれている。森の近くには「神水の池」と呼ばれる一日当たりの湧水量が190万ℓの神秘的な池がある。「たかくまふれあいの森」は登山というよりは、森を散策しながら樹木名を覚え、水源林としての森の役目を楽しく学習するのに適した場所で、親子連れでも楽しめるおすすめポイントのひとつである。近くには谷田の滝の絶景地がある。

「森の巨人たち100選」スダジイの看板。たかくまふれあいの森」には、南日本特有の照葉樹林をつくるアカガシ、シイノキ、タブノキ、イスノキなどの天然広葉樹が原生に近い形で残る。

陣岳国際の森 志布志市
ダグリ岬の背後にそびえる標高270mの陣岳は、眼下に白砂青松の志布志湾、更に志布志の町や大隅半島一帯を眺望できる景勝地である。山頂一帯は、国際交流で志布志を訪れた各国の人々の記念樹が植栽され「陣岳国際の森」と呼ばれている。展望所には高さ3.1m、直径2.6mの巨大な地球儀が置かれ、国際の森の雰囲気を醸しだしている。現地に設置してある陣岳の由来について書かれた案内看板には次のように記されている。「笠祗山系の南端に位置するこの岳は、日向路を越えて、南大隅の山河を一望におさめる景勝の地として昔から知られている。応永8年(1401)串間より侵攻した本田忠親の軍勢はこの丘に陣を敷き、志布志を侵さんとして戦端を開いた。時に志布志郷民は城主新納実久を助けて共に防ぎ戦い、宝満寺河畔に之を破った。以後郷民はこの戦勝を記念し、志布志郷攻防の要衝であるこの岳を陣岳と称し、今にその名を伝えている」。

陣岳交際の森」のシンボルになっている山頂付近の地球儀。遠方、志布志湾上に「枇榔島」が浮かぶ

叶(かのう)岳 肝付町内之浦
叶岳ふれあいの森は内之浦地区のほぼ中央にあり、すばらしい景色を眺望でき、海と空が解け合う美しい大パノラマである。555段ある階段を上ると標高187mの高台に展望所があり、内之浦の町を眼下に内之浦湾をはじめ津代半島、国見連山を一望できる。さらに上に登ると研修施設「木遊館」(管理棟・森の学舎)や八角屋根8棟のコテージがあって、ひとつひとつに「わくわく」「きらきら」など、かわいい名前がつけられている。

555段あるGOGOGO階段を登り、鐘のあるゲートをくぐるとそこには左右に山、正面に海の見える展望台がある。
大隅の照葉樹林 肝付町(二股・金弦)
照葉樹原生林体感コース~
大隅半島の山々は照葉樹地帯の生態系に位置するが、大隅の貴重な財産である固有の照葉樹林が失われつつある。大隅原生林の会は照葉樹林の復元と保存を目指し、さらに「綾、霧島、大隅」を結んだ九州南部照葉樹林帯を検証するために肝付町の二股側から林道を登り、金弦橋付近に降りる原生林体感コースを作成した。現地コースの照葉樹樹林内には幹廻り5メートル、直径1m60cm余りのタブノキやイスノキ、ウラジロガシ、、スダジイなどの巨木が林立し、所々、倒木した巨木のイスノキやタブノキの芯が散在し、かっての原生林の風景を体感することができる。樹林内には学術的にも貴重なヤッコソウも自生する。

肝付町の二股キャンプ場前から金弦に降りるコースの照葉樹林内の検証縦走風景。

悠久の森 曽於市財部
曽於市財部の「悠久の森」は緑豊かな森林の保全と育成、さらにこの森林を伐採せず未来永劫に渡って子孫に残そうという目的で名付けられた。悠久の森は照葉樹林と人工林からなり、広さは36.3haに及ぶ。春は新緑、秋は紅葉が美しく、四季折々の風景を森林浴をしながら楽しむことができる。渓流沿いには、約一万歩を歩く往復7kmの遊歩道があり、トレッキングやウォーキングには最適で、毎年ウォーキング大会も開催される。悠久の森は平成14年に「全国遊歩道百選の森」、平成16年に「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に認定される等、すばらしい自然、文化、歴史遺産の残る地である。

「悠久の森」は照葉樹林と人工林からなり、四季折々の景観を楽しむことができる。