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富士登山環境問題ルポ ~富士山環境問題の現状と対策~
   はじめに
今回の富士登山の動機 



 今回の富士登山は、1970年(昭和45年)8月10日の富士登山以来で実に43年振りの二回目登山となった。富士登山者数は平成20年度には30万人に達し,今回、世界文化遺産に登録されたことで、更なる登山者の増加が予想され,トイレやゴミなどの環境問題の一層の悪化が懸念される。山頂登山を兼ねてこれら富士山環境問題の現状を自分の目で確かめ検証するのが今回の富士登山動機のひとつだ。前回、登山した時の写真や記憶を手がかりに,最新の富士山環境問題の現状を検証し、ルポする。 

 富士山のごみ問題の現状
 ごみ問題の現状






 
富士山では、富士スバルライン等によってアクセスが容易になった1960年代頃から登山者が増加し、ごみ問題が深刻化するようになったという。前回、1970年に登山した時の写真を見ると登山道にゴミが散乱し、当時のごみ問題の現状がよく分かる。あれから43年ぶりの今回の登山で最初に気がついたことは、登山道に目立ったゴミはなく、ゴミ持ち帰り等の徹底したゴミ対策ぶりが印象に残った。近年、散乱ごみの回収量は毎年数トンにものぼるようになり、ごみ問題を解決するため、国・自治体、市民団体等によって大々的な清掃活動、持ち帰り運動等が展開され、五合目以上の登山道における散乱ごみは目立たなくなったという。
しかし、五合目以下の広大な人目のつかない富士山麓には、今でも粗大ゴミや産業廃棄物の投棄が後を絶たず行政や市民団体による清掃活動、不法投棄防止パトロール等の取り組みが継続されているという。今回の世界文化遺産登録がこれらの環境問題を解決し、後押しする力となればいい。
 
   写真で見る今と昔の登山風景と登山道
 昔と今の登山風景と登山道







 
現在(2013年)の登山風景と登山道 2013/7/9
 
昔(1970年)の登山風景と登山道 1970/8/10
   ↑ 昔も今も変わらない富士登山風景だが今回の登山では登山道に目立ったゴミを見付けられなかった。
1970年のゴミの多い登山道









  ↑当時(1970年)の富士登山道に散乱したごみの写真。 1970/8/10
富士山のトイレ問題の現状
富士山のトイレ問題の現状

改良型トイレの整備


 トイレ利用の仕組み

今回の富士登山では、ゴミ問題だけでなくトイレ問題の変化にも気付かされた。かつての垂れ流しだった当時のきたない・臭いのトイレのイメージはなく、環境型のトイレや公衆トイレが整備され、快適に利用することができた。以前は、富士山のトイレのほとんどが浸透放流式のいわゆる垂れ流し状態で各山小屋ではシーズン終了後にし尿を一斉に放流し処分していたという。その結果、トイレットペーパーの色から、まるで白い川のようだと揶揄された景色は、富士山の環境問題を象徴していた。
その後、市民団体によるバイオ式(オガクズやかき殻を使った微生物処理)トイレの研究と実証実験等の取り組みが進み、一定の成果をあげ、これをもとに国や自治体による改良型トイレの導入取り組みが本格的に始まったという。平成11年度からは国の補助事業がスタートし、平成18年度までにほぼ全ての山小屋においても環境に配慮した改良型のトイレが整備され、平成17年には環境省により、環境に配慮した山頂公衆トイレが整備された。
ちなみにトイレ利用はチップ制で一回の利用につき200円払う仕組みになっていた(山頂トイレは300円)。トイレは清潔感のある洋式水洗だった。水洗といっても一般の水洗式ではなく使用後は水節約のため、圧のかかるノズルで流し、使用した紙は便器に流さず備え付けの袋に入れる仕組みになっていた。トイレがきれいでトイレを休憩室にする人がいるらしくトイレ内に「ここは休憩所ではありません」という張り紙がしてある山小屋トイレまであった。
   写真で見る山小屋の改良式トイレ
 清潔感のある山小屋の改良式トイレ実際画像








貴重な雨水を利用した手荒い場と男性用トイレ

節水のため使用後は圧のある洗浄ガンで水を流す。 
山小屋の水事情 富士山で水はとても貴重だ。山小屋宿泊時の洗面・ハミガキ・うがいは自分のペットボトルの水を使用する。もちろん風呂はないのでウエットティッシュが必携。山小屋で500mlのペットボトル一本相場400円。
山小屋のトイレと公衆トイレ
 
  富士山山小屋トイレ建物  公衆トイレの外観 
  トイレ利用はチップ制で200円(山小屋山頂トイレは300円)。お金はトイレ維持管理に使われる 
  富士登山者数の現状
 登山者増加の推移 平成17年に20万人程度だった登山者が平成20年には30万、平成24年には約32万人に達した(※表1)。世界文化遺産登録により、平成25年度の登山者数の推移が気になるところだ。これだけ多くの人が富士山に登るようになった要因は何だろうか.。
 登山者増加の要因    
 
人口増加年度のデータを見ると、トイレ等、山小屋宿泊施設等の環境整備と機を同じくして平成20年度前後からツアー登山者の増加が目立つようになったという。増えた要因はこれら環境整備のほか、社会的要因として近年の健康・登山ブームにのった中高年・団塊世代の登山者増加(表2)、さらに外国人の登山者の増加(表3)も要因の一つとして考えられる。
  ※表1  富士山8合目における近年の全登山者数の推移  (環境省富士山登山者数調査結果)  
 登山者推移データ




登山者数(人) 200,292 221,010 231,542 305,350 292,058 320,975 293,416 318,565
   H17  H18  H19  H20  H21  H22  H23  H24
       平成20年に30万人を超えて以来、増減はあるものの30万人前後で推移している。特に、吉田ルートの増加が著しい。
世界文化遺産登録になり平成25年の登山者の人口の推移が気になるところだ。
平成17年からの富士山の全登山者数及び各登山道別登山者数の推移<環境省>
吉田ルートの増加が著しい
  ※表2  年代別利用者
 年代別登山者データ  全体では20 歳代以下が約1/3 を占め、次いで30 歳代となっており、20 歳代以下と30 歳代で全体の2/3 弱を占める。
 20 歳代以下 41.3%  30 歳代 25.6%  40 歳代 15.3%  50 歳代 8.6%  60 歳代以上 7.1%
   ※表3   富士登山国別利用者の割合
国別登山者データ  日本 75.7%    外国 23.5%   無回答 0.7%   計  100.0%
日本国籍が全体の3/4 を占める。
 
 今後、予想される登山者増加の問題
登山者増加と問題点







 
世界の富士山として新たな一歩を踏み出した今、富士山のかかえる問題はこれからだ。それは、世界文化遺産登録により、登山者が激増し、宿泊施設の不足やトイレ等、オーバーユースの問題が深刻化し、懸念されるからだ。手元にある五合目以上の山小屋リストを見ると、現在、富士山の山小屋は4大ルートに40件余り存在し、単純計算で1日に約7000人が収容可能だ(吉田ルートは約4000人)。環境省の調査では平成25年度に一万人を越えた登山日が3日間あり、明らかに宿泊所不足の現状が浮かんでくる。いずれも土曜日だったという。曜日によって登山者数の大きな変動が見られ、平日の登山日選択は少しでも問題解決の糸口になりそうだ。今回の登山は平日だったために部屋の空きがあり、宿泊しやすい環境だった。(※下写真)
今後予想される登山者の増加は、オーバーユースの深刻な環境悪化を招く恐れがある。
山小屋が満杯になり、宿泊できなくなると今まで以上に弾丸登山者が増え、そのことは高山病など個人の問題だけでなく、登山道やご来光時の混雑に拍車をかけ、災害発生にもつながりかねず、安全面でも憂慮すべき事態が予想される。(※下写真)
  各登山道における日別登山者数 平成24年度<環境省>
各登山道における日別登山者数 













 
 
登山道の登山者数の合計が最大だった日は、7月28日(土)の11,779名。1日あたりの登山者数が1万人を超えた日は3日間となり、いずれも土曜日だった。
  内容補完画像
 「弾丸登山STOP」の看板






平日の空き室表示の山小屋
 
登山道に設置の「弾丸登山STOP」の看板

土・日を除くと平日空き室があり、予約が取りやすい。 
  これからの富士山の環境問題対策
環境問題対策



富士山の環境保全・環境問題対策としてこの度、世界文化遺産に登録された富士山の入山料について話し合う山梨、静岡両県の協議会の作業部会が入山料を1000円で試行することを正式決定した。入山料導入は賛否両論あり、入山料使い道についても今後十分検討されるべきだ。ヤマケイの「富士山の環境問題解決のために必要なことは何ですか」のアンケート結果によると、入山料徴収に伴う登山者からの資金でトイレの整備・維持管理やゴミの処理をすすめるべきだとし、入山料徴収に好意的だ(下記グラフ)。入山料への賛否を含め、金額についても、来年夏の本格導入に向け、今後さらに検討を重ねる必要があろう。
ヤマケイ
アンケートより
 

















 富士山の環境問題解決のために必要なことは何ですか」 ヤマケイの「みんなの登山白書」アンケートより
<ヤマケイオンラインの調査>

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