TOPへ  方言のページへ

地域素材の活用「総合的な学習の構想と展開を目指して」

「方言を調べよう」
〜われら鹿児島方言調査隊〜

「方言を調べよう」は、国語科単元「方言と共通語」で出てくる教材である。国語科の学習をベースにして「方言」という地域の素材を生かした総合的な学習のカリキュラムを作成し試行しました。
単元のねらい
「方言調べ」を通して、「方言」と「共通語」の特徴と役割について関心を持ち、言語の文化を見つけようとする。
「方言調べ」を通して、地域とふれあい、地域の文化を発見し地域のよさに気づく。
「聞き取り調査」による「方言調べ」の体験的学習を通して、日常生活の基本的な生活習慣の基礎を身につける。
「方言調べ」を通して地域の高齢者の方々や他校との交流を深める。
「方言調べ」を通して、情報の活用の仕方、調べ方、まとめ方など、学び方や表現する力を身につける。
単元設定の理由
「方言」はその地域や地方の人々の生活と深く結びついており、そこで生活する人々の気持ちや感覚をぴったり表現できる。この地方に残る大切な文化を知ることは地域を知り、地域を育てることにつながる。
インタビュー等の色々な方法で方言を調べることにより、家庭や地域の人々とふれあい、礼儀とか相手に対する思いやりの気持ち,コミュニェーション力等、日常生活の基礎を育てることができる。
方言調べを通して福祉、高齢化社会へ向けて総合的な学習へ発展させることができる。
調べた方言を情報発進し、交換することにより、他の地域や他の人々とかかわりへ発展し、そのことは「共通語」をより深く理解し、共通語の大切さに気づくことにもつながると考える。
ここに本主題設定の大きな理由がある。
地域・人との関わりから:(家族、地域の人々、全国の人々、他の学校の人々へ)
情報・メディアへの関わりから:(コミュニケーションメディア、体験メディア、電子メディア、放送・新聞メディア等)
学習を展開するにあたって
「方言とは何か」「共通語とはなにか」を理解してから体験的学習を展開したい。
「方言」のことばの中にも、表現するのにふさわしくない言葉があるのに気づかせたい。
インタビューなどの体験的な活動、高齢者の方々との交流、他校との交流、その他様々な情報の活用を通して学習を展開したい。このことは「福祉教育」「情報教育」等への新たな総合的な学習へ展開の可能性が期待できる。
「方言調べ」にあたってはその子の生活環境や言語環境を十分考慮し、学習方法を工夫する。

「方言を調べよう」学習全体指導計画(全12時間)

1、学習問題をつくる。(2時間)
カセットテープを聞く・教材用のカセットテープ・自作会話録音テープ
感想を書く。発表する。
教科書の説明文から「方言」と「共通語」について知る。
学習問題を作る。
学習方法の選択。まとめ表現方法の選択
2、学習課題を追求・調べる。(6時間)
課題追求方法の選択
家の人や親せきに聞いて調べる。
・家の人や祖父、祖母に聞いて調べる。
・ほかの地方にすんでいるしんせ
きや知りあいにたずねる。電話で
交流して調べる。
出かけて調べる。
・高齢者団体との交流
・町に出かけてインタビュー  
・近所のお年よりにインタビュー   
情報を活用して調べる
・図書やパンフレットの活用
・インターネット情報の活用 
・方言を使ったテレビの番組の活用
・Eメールを使って他の学校と交流   
3,発表する(2時間)
情報発信の選択(調べてわかったことを発表し合おう。)
紙芝居やかべ新聞にして げきや動作を通して インターネットを使って
方言辞典を作って 方言地図を作って 方言カルタや方言クイズを作って
4、いかす(地いきのひとたちやほかの学校と交流しよう。)(2時間)  
調べた方言を地いきに出かけて話す。「高齢者の方々やグループ」と交流する。
他の学校と「方言交流」をする。・民話を方言台本に書いたり、げきにしてテープを交換するなど。ビデオレター            
調べた方言をインターネットのホームページで公開する。調べた方言をEメールやHPで交流する。

 方言を調べよう「〜方言調査隊〜」指導計画



方言を調べよう
 全12時間
単元の
ねらい
・「方言調べ」を通して「方言」と「共通語」の特徴と役割につ
いて関心を持ち言語の文化を見つけようとする。
・「方言調べ」の活動を通して地域とふれあい、地域の文化を発見
し地域のよさに気づく。
月    主 な 学 習 活 動・内 容                 時数     主 な 支 援 内 容                

11


















12








1,課題を決め、学習の計画を立てる。
・方言のテープやCDを聞く。
・教科書の説明文を読み、「方言」と
「共通語」について知る。

2学習課題を追求する。
 
・家の人や祖父母に聞いて調べる。

・人の集まる町に出かけ、インタ
ビューや聞き取り調査をして調べる。

・インターネットデータベースや図書
文献等を使って調べる。

・他地域や他校と交流して調べる。
 (Eメール、電話、手紙、パンフレット等)

3、発表の方法を選択してまとめる。
・紙芝居や壁新聞にして
・方言げきにして
・方言辞典を作って
・方言地図を作って
・方言クイズを作って
・方言通信を作って
・方言ビデオを作って
・調べた情報をインターネット
 にのせて

4,発表会を開く


5、調べた方言をいかす。
・高齢者の方々やグループと交流する。
・他校との交流
 2




 4












 2




 




 2



 
 2


・教材用のテープ
・家庭での日頃の会話や祖父母
 の会話のテープ

・多用な学習課題追求の方法を
 知る。
・家庭での学習

・事前に下調べを十分しておく。


・調べる方法は各人に選択させる。


・県外の学校とEメールによる交流

・個人でまとめるか、グループで
 まとめるか各自選択させる。

・発表の方法を各自選択させる。






・多用な発表形態が予想される
 ので事前の準備をしっかりして
 お く。

・福祉ボランティア的な体験活動

「われら 鹿児島方言調査隊」活動場面の紹介

学習方法 二人で組を作ってのインタビューによる聞き取り調査
学習の展開場面 人の集まる町にでかけ、インタビューや聞き取り調査をして方言のことを調べる。
本時のねらい ・インタビューによる「幅広く生きた方言」の取材活動の学習を通して鹿児島の方言のよさを見つける。
・インタビューを通して地域の人たちと直接言葉を交わし、あいさつの仕方等日常生活の基礎をつくる。
実施上の留意点 ・インタビューの仕方について事前に十分学習しておく。(あいさつの仕方、お礼の仕方等)
・店側と事前の打ち合わせを十分しておく。

「鹿児島方言調査隊」に参加して

児童の一口感想
おきゃくさんがたくさんいてびっくりしました。インタビューのメモをもとにして話しかけました。どきどきしました。あいさつをして自己紹介をしたら気持ちが落ち着いてきました。話しかけると相手の人もにっこりわらって答えてくれました。若い人や年をとったひとにもインタビューしました。90さいのおじいさんは「おやっとさあ」の方言を残したいと元気に答えてくれました。
インタビューがすんだあと、「じょうずにあいさつやお話ができたねえ。感心やが。学校の勉強も落ち着いてがんばりなさいよ。」といわれてとてもうれしいでした。
わたしは、お客のいない店を見つけてお店の人にもインタビューしました。くりを売っているおにいさんが親切に教えてくれました。若い人も方言を使っていることがわかりました。へんな方言もあったけどたくさんの方言を見つけることができてよかったです。
今までお年寄りの人とあまり話をしたことがありませんでした。インタビューをしたらやさしいことばがかえってきたのでとてもうれしいでした。これからはおとしよりのひとにも声をかけられそうです。
方言をたくさん調べることができました。インタビューで大切なことは「相手の気持ちを考えることが一番大切だということがわかりました。インタビューの仕方、あいさつのしかた、相手にたいするおもいやりの大切さ等、方言調べを通してたくさんのことを勉強できてよかったです。
思ったより人にきくのはたいへんだったけど方言のことがよくわかったからよかったです。また方言を勉強して方言のことをもっと知りたいです。
方言をたくさん調べることができた。大切なのは自分だけの事だけでなく相手の気持ちも考えることでした。とてもいい勉強になりました。テレビでみた「おやっとさあ」などの意味は「おつかれ様」だというのが分かった。
一番最初に70代のおじいさんにきいたらのこしておきたい方言は「おやっとさあ」といわれたのですごくわらいました。次に、「おもしろい方言を教えてください。」ときいたら「すったい、のさん。」といわれたのでさっきよりかなりわらいました。とてもいい勉強になったのでもう一回やってみたいです。
方言は「ださい」とか「年よりくさい」とかいやなイメージを持っていましたが、方言調べをして方言はその地方に住んでいる人々の心をあたたかく結ぶ大切な働きをしていることがわかりました。

実践の成果と展望

学習前のアンケートで「方言についてどう思いますか」と子どもたちに質問しました。
ほとんどの子どもたちが「ださい」「ふるい」「ねんぱい」・・・という暗いイメージで方言をとらえていました。
方言は地域の文化であり生活の歴史そのものであるはずなのに、これでは地域から方言が更に消えていくと危惧しました。
ところが学習後、お年寄りの人にも気軽に声かけできそうだ。高齢者の方々ともっと交流してみたい。・・・
このように学習後は子供たちの方言に対するイメージがすっかり変わってきました。
そのことはお年寄りの方々に対するイメージの変化をもたらしました。・・・
地域文化としての方言のよさに気づき、さらに他地域、他校との交流にまで発展させることができました。
方言調べのインタビューの体験的な活動を通して地域の各層の方々と向かい合って会話を交わし、生きる力としての日常生活の基礎も培うことができたと確信しています。これからは高齢化社会、福祉の社会を迎えます。コミュニケーションツールとして方言は今以上に大切な役割を担うことになります。異文化理解としての方言の学習は国際理解にもつながります。